実務に役立つ民法・債権法改正~変更点セレクト20 No.16 代理権の濫用、利益相反の効果

Shinozuka & Noda

今回のポイントは次の2点です。
・代理権濫用の効果はどのように規律されたか。民法93条類推適用は維持されたか。
・利益相反の効果はどのように規律されたか。

代理権の濫用

代理人が、代理権の範囲内で、本人のためにすることを示して行った行為は本人に帰属するのが原則です(民法99条)。しかし、その行為が、名義上は本人に帰属するものであっても、実は自己又は他人の利益を計るものであった場合が、代理権の濫用です。

形式的には代理権の範囲ですから、無権代理の規定は用いることができません。そこで、最高裁は、民法93条の規定を類推適用し、相手方が代理人の上記意図を知り又は知り得べきときにはその行為は本人との関係で無効としました。

改正では、この要件を維持しつつも、その効果を無権代理とする立法を行いました(改正民法107条)。判例の明文化といえる規定ですが、次の点で若干の違いがあります。

– 無効ではなく、無権代理の規定が適用される

○ これにより、追認(改正民法113条)やその催告(同114条)が可能になる
○ 追認がない場合、代理人自身が履行や損害賠償責任を負いうる(改正民法117条)

利益相反一般

現行民法108条は、いわゆる自己契約や双方代理を禁止していました。もっとも、条文上はその効果が明らかではなく、判例により、無権代理と解されてきました。

また、解釈上、この禁止は自己契約や双方代理に留まらず、利益相反行為一般に及ぶと解されていました。

そこで、改正では、次の通り上記の判例や解釈を明文化する規定が置かれました。

– 自己契約や双方代理の規定の効果を無権代理とする(改正民法108条1項)
– 自己契約や双方代理の他の利益相反行為についても、無権代理とする(同2項)

利益相反の有無は、従来通り、外形的・形式的に判断されます。ただし、改正議論において、実質的に見て本人を害さない場合には利益相反ではないという考え方も有力に主張されており、この点は今後の解釈に委ねられます。