実務に役立つ民法・債権法改正~変更点セレクト20 No.19 詐害行為取消ー倒産法制と連続性強化、二重の故意の緩和

Shinozuka & Noda

今回のポイントは、次の4点です。
・相当対価処分行為はどのように規律されるのか。
・既存の債権者に対する担保供与や債権消滅行為についてどうか。
・過大な代物弁済についてはどうか。
・転得者に対して取消権を行使する場合、経路者すべての主観についていわゆる「二重の悪意」が必要か。破産法に基づく否認権行使の場合はどうか。

詐害行為取消権に関する改正は多岐にわたりますが、この背景には、倒産制度における否認権との関係があります。倒産法においては、行為類型に応じた否認の要件が定められる一方で、民法においては、実質的に単一の規定を解釈によって補うことが行われていました。結果として、これら2つの制度が適用される場面が整合せず、せっかく破産法の規定で一定の価値判断の下に予見可能性を高めた規定を設けても、その実質が得られないという批判がありました。

そこで、今回、2つの制度を可能な限り整合させるべく、民法・倒産法の双方において改正が行われました。

民法における一般規定+行為類型別規定の採用

改正法は、一般規定としての424条につき一定の修正を行うことに加え、424条の2から424条の4まで、行為類型別の特則を設けました。

相当対価処分行為(424条の2、破産法161条に対応)

424条の2は相当対価処分行為の特則です。現行法でも相当対価処分行為が詐害行為に該当しうることは認められていましたが、その要件や主張立証責任の配分については説が分かれていました。

改正法では、債権者が同条1~3の要件を全て主張立証した際に限り、相当対価処分行為の取消が認められます。

一 その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
二 債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
三 受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

第3号に関し、一般規定において取消を免れるためには、受益者自らが債権者を害することを知らなかったことを主張しなくてはなりませんが、ここでは、受益者における「債務者が隠匿等の処分をする意思」の認識を、債権者側が主張する必要がある点に注意が必要です。

特定の債権者に対する担保等の供与(424条の3、破産法162条に対応)

424条の3は、既存債権者に対する担保供与や債権消滅行為に関する特則です。いわゆる偏頗行為否認の類型です。

– 否認権と同様の時的限界が設定されたこと
– 判例(最判昭和33年9月26日等)によって要求されている通謀詐害意図の明文化

がその内容です。否認権においては、支払不能等の認識が必要ですが、ここでは、より重い通謀詐害要件がそれに代わります。

過大な代物弁済(424条の4、破産法160条2項に対応)

424条の3で債務消滅行為が規律されますが、その際に行った給付が消滅した債務より過大な場合には、その過大な部分について一般規定である424条によって律されます。破産法160条2項と同様の規定です。

転得者に対する取消要件の調整(424条の5、新破産法170条)

転得者に対する詐害行為取消は、否認権との関係で最も議論がありました。詐害行為取消に関する判例(最判昭和49年12月12日)は、たとえ受益者が善意であっても、転得者が悪意であれば詐害行為取消を広く認めていました。これに対し、否認権では、経路にあたる者(受益者)に否認原因があることを要するのみならず、さらにこれらの者の主観面についても転得者が認識していること、いわゆる「二重の悪意」が要求されています。この結果、いわば平時の法律である民法のほうが広く取消が認められるという逆転現象が生じていました。

そこで、民法と破産法の双方を一度に改正することで、2つのルールの整合が図られました。

民法側の改正(424条の5)

詐害行為取消における要件は次の通りです。

– 債権者が受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる(すなわち、受益者は善意ではない)
– 受益者からの一次転得者については、転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っている
– 二次転得者以降については、その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っている

「債務者がした行為が債権者を害することを知っている」とは、それを基礎づける具体的事実を指します。もっとも、上記のような個別類型について特則が設けられている場合は、その要件が「債権者を害する」ことを基礎づけるものであれば、認識を要すると考えられています(一問一答民法(債権関係)改正 Q57)。

破産法側の改正(新破産法170条)

破産法においても、同様の改正が行われています。

– 破産者と受益者の間の行為を否認できることに加え
– 転得者が、破産者の行為が債権者を害することを知っていれば

転得者との間の行為も否認できるようになりました(新破産法170条1項1号)。以前と異なり、転得者は経路者の主観面を知る必要がない点で、要件が緩和されています。