実務に役立つ民法・債権法改正~変更点セレクト20 No.20 連帯債務ー絶対的効力事由の限定

連帯債務においては、連帯債務者の一人について生じた事由の効力が見直されました。
今回のポイントは、次の4点です。

・1人に対する履行の請求の効果は他の連帯債務者に及ぶか。
・1人に相殺事由が存在する場合における他の連帯債務者の抗弁の内容とは。
・1人に対する債務免除の効果は他の連帯債務者に及ぶか。
・1人に時効が完成した場合、その効果は他の連帯債務者に及ぶか。

1 履行の請求

改正法は連帯債務者の一人(Aとします)に対する履行の請求を相対的効力事由とし(441条本文)、改正前民法434条は削除されました。そのため、Aに対する請求は、他の連帯債務者(Bとします)に対してその効力を生じません。

ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人(B)が、別段の意思を表示した場合は、当該他の連帯債務者(B)に対する効力は、その意思に従います(441条ただし書)。そのため、債権者及びBが特約により、Aに対して請求がされた場合にBに対しても請求の効力が及ぶとすることは可能です。同様の特約は以下の2~4でも可能です。

2 相殺

改正前民法は、連帯債務者の一人(A)が債権者に対して債権を有し、Aが未だに相殺を援用しない場合に、他の連帯債務者(B)は、Aの負担部分について相殺を援用できるとしていました(改正前民法436条2項)。

しかし、他人の債権について相殺を援用できることに対して批判が強く、改正法では、Aが相殺を援用しない間、Bは、Aの負担部分について、債権者に対して債務の履行を拒絶できることとしました(439条2項)。

3 債務の免除

改正前民法は、債権者が連帯債務者の一人(A)に対し債務の免除をすると、Aの負担部分について、他の連帯債務者(B)の利益のためにもその効力を生じるとしていました(改正前民法437条)。

しかし、債権者がAに対して債務の免除を行っても、Bとの関係でも債務を免除する意思を有しているとは限らないので、改正前民法437条は削除され、改正法では債務の免除は相対的効力事由となりました(441条本文)。

4 時効の完成

改正前民法は、連帯債務者の一人(A)に時効が完成したときは、Aの負担部分について、他の連帯債務者(B)もその義務を免れるとしていました(改正前民法439条)。

しかし、債権者の負担が大きいとの批判があり、改正前民法439条は削除され、改正法では時効の完成は相対的効力事由となりました(441条本文)。