実務に役立つ民法・債権法改正~変更点セレクト20 No.14 債権の譲渡制限特約の効果及び供託

Shinozuka & Noda

今回のポイントは、次の3点です。
・譲渡制限特約違反の債権譲渡の当事者間の効力、債務者に対する効力
・譲渡制限特約付債権の債務者はどういう場合に供託ができるか。
・譲渡制限特約付債権の譲渡人が破産した場合、譲受人は債務者に対してどのような請求ができるか。

債権の同一性を保ったまま、債権者である譲渡人が譲受人に対して債権を譲渡することでその帰属を変更するのが債権譲渡です。譲渡制限特約に関する改正では、債権者と債務者の利益のバランスが問題になりました。

現行民法466条は、第1項で債権譲渡を原則自由としつつも、第2項に基づき、譲渡禁止特約という方法により譲渡を制限できました。すなわち、禁止特約が付された場合は、当事者間で譲渡の効力が発生しませんでした。ただし、この特約は善意無過失の第三者に対抗できないため、そのような第三者への譲渡の効力は妨げられません。

これを債権者の視点から見ると、譲渡禁止特約を付された場合、債権譲渡自体が不可能となるため、債権譲渡を用いたファイナンスができないという問題がありました。

対して、債務者の視点からは、弁済先の固定は重要なことです。勝手に譲渡され、二重弁済のリスクを負わされてはたまりません。

改正後の譲渡制限特約の効力

もっとも、弁済先が固定され、債務者に大きな不都合がなければ、当事者間での譲渡の効力を否定するまでのことはない。そのような考え方から、改正後の466条2項は、債権譲渡制限特約が付された場合でも、当事者間での譲渡は有効としました。その上で、同3項により、譲受人が譲渡制限特約に関し悪意か重過失の場合には、債務者は、譲渡人に弁済すればよいことになりました。さらに、譲受人が悪意重過失か分からない場合を想定し、466条の2によって、譲渡制限特約付債権の債務者は常に供託ができるようになりました。

現行法でも、善意の譲受人には譲渡禁止特約は対抗できません。この場合、債務者は譲受人に弁済する必要があります。もっとも、契約書に譲渡禁止特約が書かれていれば、譲受人は通常契約書をチェックするでしょうから、多くの場合、譲受人の悪意か重過失が認められます。改正後もこのことは変わらないと考えられており、債務者としては、譲渡制限特約を契約書に書く等の方法により、従来通り弁済先固定のメリットを享受することができます。

このように債務者の利益は保護される一方で、譲受人が悪意の場合でも譲渡自体は有効になりましたので、譲渡人・譲受人側では、債権譲渡を用いたファイナンスが可能になります。

なお、譲渡制限特約違反により債務者が契約を解除できるのではという懸念も指摘されていますが、これに対しては、立法担当者が、新法のルールに従えば譲受人が悪意であっても弁済先固定の利益は確保されていることから、特段の事情がない限り、債務不履行を構成しないという見解を示しています(一問一答Q89,法制審議会第83回内田貴委員)。

破産の場合の供託

以上の通り、譲渡制限特約が付された債権に関しては、譲受人が善意であることが当事者間に争いないといった例外的な場合を除き、弁済金は譲渡人に払われるか、供託されることになります。譲渡人に支払われた場合、譲受人はそこから支払を受けることになりますが、譲渡人が破産した場合、それを得られない可能性があります。

そこで、このような場面を想定し、新法466条の3は、破産手続が開始されたら、譲受人は弁済金を供託するよう債務者に請求できることを定めました。これは、悪意の譲受人も同様です。譲受人は、この還付を受けることにより、債権を回収することができます。